富士山より少しだけ高い標高であるマレーシアのキナバル山を攻略してみました。
このキナバルはマレーシア・ボルネオ島の最高峰となる4000メートル級の標高を有する東南アジア有数の山です。ですが、山頂までの道中には通行の障害となるようなボトルネックポイントは存在せず、ただ求められるのは山頂まで辿り着く「体力」、及び天候に関する「運」となります。
・・・
出発当日、現地の天候に関する事前情報を確認すると、なんと全日程で「晴れのち雷」という日本ではあまり聞かない謎予報を目にしました。(登山本番当日によりによって「雷」って何なんですかねー。)
今回は駄目かもしれない・・・という少し見通しの暗い思いで日本を発ったのでした。
成田からコタキナバルへ飛行機で移動
やはり閉所に長時間拘束される飛行機は好きになれません。四肢が軽く固定された状態で属する機内食は結構シンドイものが。ですが鍛えられた日本人。ギュウ詰めされた状態であっても目的地に近づいており「サービスです♪」と言われたのなら「サービスですね♪」と受け堪えられる程度の根性は備えております。
現地のコタキナバルには夕刻に到着しました。
降る気満々の空模様
予報通り夕食ついでに町中をプラプラ歩いていたら遠方にヤバそうな雲を確認。
「もう完全に積んだわ、今回の登山旅行。兄上まで巻き込んだ上に沢山のコストを支払って何やってんのかなー・・・」
両手で顔を覆ってそう思いましたね。こんな時はどうするべきだろう。
数分考えた後に出た結論は・・・飲むしか、ない!
タイガー(1回目)
ところが・・・
朝、雨が降っておらず当たり前のように登山口に向けて出発
雨は特に降っておらず、自分の目からは悲観的に見ても晴れのち曇り。これなら行ける!
道中100%雨の認識だった自分には嬉しい誤算。
登山口までの途中でナバル村という休憩スポットに立ち寄る
ここからターゲットの全景を確認することが出来たのですが、マレーシアの最高峰。なかなかの雄姿でした。
公園本部
ここで登山届を提出します。
登山証を受け取った後、登山口のTimpohonGateまでの数キロをワゴンに乗って移動。
現地についたので早速ゲートを潜ってスタートかな?と思ったらガイドから「この先にあった橋が落石で破壊されてしまっているため先に通れません」とのこと。
迂回路として脇の下り道を一旦降り、沢を超えた後に登り返すことでリカバーするとのこと。影響は1時間弱のプラス。
最先の悪さを感じつつスタート!
中腹の宿(LabanRata Resthouse)まで荷物を上げてくれる歩荷(ポーター)さん。1つ10キロ上限の荷物をかなりの数背負いこみ、この状態で一人あたり片道1500円弱の支払いで2000メートル上の宿まで持って行ってくれるのです。有り難いことです。
ジャングルの山道で渋滞を作りつつ靴についた粘土に難儀
沢を越えた後に迂回路が終わり、想定されていたルートに乗ったら後は順調そのものでした。
「雨が降るだろうな・・・」
と期待値を低くして身構えていたのですが、逆に日が射してきました。
「シェルター」と言われるチェックポイント(休憩所)が凡そ30分毎に設置されています。
行動食を適宜取りつつ先を目指します。
道は基本的に一本道であり、実に綺麗に整えられています。ルートロスのリスクはほぼ0と言って良いと思います。
暫く登ると正面に御神体が現れ、背面には雲海が見え始めます。
相変わらず天気はとても良く、昨日までの絶望的な気分が払拭されて行くのが判ります。
道中には日本ではあまり見られないであろう東南アジア特有の植物が点在していました
雨どころか少しもガスりません。期待値が低かった分、感謝の気持ち一杯で進みます。
歩けば歩くほど天気が良くなり、気持ちの良いトレッキングが続きます・・・と思っていたら・・・
麓からものすごい勢いで雲が追っかけてくるじゃないですか・・・これは。これはいけない。
急いで本日の目的地である宿に駆け込みます。
宿に駆け込むやいなや物凄いスコールが始まりました。ここまで登れば雲の上に出てるしそうそう雨は降らないんじゃないかなぁ、とか思っていたのですが甘かったです。
取り敢えず歩いている間は降られなかったので自分は良かったですが、後から歩いてきていた人たちは随分と難儀していたようです。
宿に駆け込んだ直後に、岩しかないはずの山頂から突如として滝が発生…
そんなことより同行したパーティの皆さんと乾杯や!
タイガー(2回目)
小屋内の壁には写真が飾られていました。場所が場所だけに色々とある…らしい。
翌日は2:30から登り始めるのですがこの豪雨。今度こそ駄目かと思いつつ仮眠をとったのですが、目を覚ますと…
晴れています!
情報では0度付近まで下がると聞いていた気温も(息が少し白くなるくらいで)然程下がっていません。風も殆ど無い状態。なんという引きの強さだろう。
ヘッデンの明かりを手がかりに登り始めます。目的地の山頂まで800メートル程度上げることとなります。
サヤサヤハットという山頂に至る前の最後のチェックポイント
もし天候が悪く危険と判断された場合はここのゲートが閉じてしまい下山を促されてしまうとのことでしたが、今回は昨夕の雨にも関わらず特に問題なく進むことが出来ました。
この先には岩場地帯が続いており、場所によっては3点支持で進む必要がある場所がところどころ出てきます。更に夜間で周りの状況が見えづらいことや、空気が少々薄いこともあり消耗が早い感じ。道自体は少しも難しくないんですが。
山頂まであと100メートルちょっと。もう少し・・・!
この道標が見えたらあとは緩やかな斜度の岩場をボチボチ歩くだけでした。
すると、地平線の彼方からの光と共に山体のシルエットが顕現してきます。
山頂を視界に捉えます。
もし富士山のように登山者を無尽蔵に受け入れた場合、ココは人で溢れかえったかもしれませんが、宿のベッド数以上は山道に入れないこともあり、どことなくプレミアム感が漂っております。
肩から茜が射してきます。条件が良くないと見れないとされていた”影キナバル”もくっきり。
残り僅かな岩場を夢中になって這い上がります。
06:30 ローズ・ピークに登頂完了。そこからのライジング・サン。
これまで頑張った事を思い出さずには居られず、胸がカッと熱くなったのを覚えています。
一旦足場の小さなピークから降りた後…
見渡すと周りに競合する山が無く、360度ビューを望むことが出来、地平線が青く、少し丸く見えました。写真では伝わらないかもしれません。
「信じられる?自分の足だけでここまでこれたなんて。なんてきれいな景色。今度はどこへ行こう。どこまで行こう。私はどこまで行くことができるだろう。」
・・・
9:00 一旦宿に戻り朝食を取ります…。そんなことよりスプライトの旨さに魂が震えます!
もう、動き始めてから6時間以上が経過しており、パーティの人たちもぐったりしています。普通なら一山登って降りるくらいの活動時間に相当しますが、ここから2000メートル以上下げるんだぜ?
・・・
ここからはただひたすら無心で下げていったのを覚えています。
最後の方になると数人がハンガーノックになる位のシゴキ具合でしたが、全員無事に下山することが出来ました。
1日で13時間以上の歩きによりさすがに腿筋がキツい
登山口に戻ると図ったようにスコールが始まりました。毎日毎日よく降りやがります。
暴風雨が凄すぎてて意味が解らないレベル…。
夜はパーティの皆さんと宴!これはもう、飲むしかないね!
その後、ホテルに戻りベッドに戻ると1分経たずに寝ることが出来ました。
これもまた非日常、最高な事なのです。。。
・・・
翌日、飛行機が飛ぶまでコタキナバルの街をうろうろしました。
Sunday Market沿いのお店にて豚の薬膳料理を食す。見た目はアレだが旨し。
タイガー(3回目)
・・・
という訳でゴールデンウィークでのキナバル登山記録でした。
今年目標としていたことの一つが達成出来たので満足です。
キナバル山の語源はアキ・ナバル(祖先の霊る山)が訛ったものらしいです。
自分は形だけになってしまうお墓参りはあまり好きではないのですが、山好きであった父に対し、今の自分を見てもらうための表現の一つとして今回の登山を企画しました。
それ故に兄上を巻き込んでみたのですが、大分キツイ思いをさせてしまったのは申し訳なかったかな。
でも、マレーシア入りするまでの天気に関するあの絶望感からは考えられないくらいの登果が得られたのではないか、と思うのですよ。
本格登山シーズンはまだ始まってすらいません。
今年は何処に登ろうか?
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