2018年4月15日日曜日

ヘッドフォンATH-W5000とヘッドフォンアンプAT-HA5000について

購入してから暫く経過し、自分なりに一旦満足の行く音が出せた、と感じたのでATH-W5000とAT-HA5000について少しだけ書いてみたいと思います。

オーディオテクニカのヘッドフォンとヘッドフォンアンプ

この2つがオーディオテクニカ社から発売されたのは10年以上前。つい最近まで同社製品のフラッグシップ機という極めて完成度が高いものとして位置付けられており、価格面においても一般的には少し高価な部類に入るかと思います。

ちなみに自分が購入したのは2,3年前。それ以前も複数のヘッドフォン環境用機器を購入していたのですが、思うような音を聴くことが出来ておりませんでした。当時を振り返ると、”もっと良い音を聴きたいがそれが出来ない...”ということに対し、自分はその要因の多くを機器の価格的なグレードに求めていたような気がします。

新たに機器選定を行う上では機器購入のスパイラルに陥りそうな自分を牽制しつつ、購入した目先の物に対する満足だけに留まらず、生活時間軸上の各ポイントで感動と癒やしを都度与え続けててくれる意味を有するものであって欲しい、という観点も持つようになっていった記憶があります。

要するに、頻繁な機器更新による短くて浅い付き合いではなく、長くて深い付き合いが出来るようにするためにはどうしたら良いだろうか。
そんな事を考えながら機器選定に勤しんでいた、と言う訳です。

・・・

購入した当初は手に入れただけの単純な喜びがあったのですが、長くは続きませんでした。実際に聞き始めると少しモヤモヤっとした微妙な思いをすることとなったのです。
というのも、確かにネット上の様々なサイトでレビューされていたように低音こそ弱いもののボーカル(特に女性)が前面に出てきており、弦楽器も良く伸びる音が出ている・・・、けれど何だろう。然程感動も湧き上がらず、長い時間聴いていたいという思いも起こらない。要したコストが頭をチラついていまい、寧ろ我慢をしながら聴いている自分の顔を両手で覆ってしまう有様でした。

「正直に言ってあり得ない。意味が判らない。」

これが嘘偽りのない初期インプレッションでしたね。

(言い訳になってしまいますが、)中長期の納得感ってお店での視聴だけでは判断し難いんですよね。

・・・

ところがそこで気落ちしたまま終わることが無かったのは、やはり良い音を聞いたときに脳が喜ぶ、あの麻薬的な快楽が聴覚から得られることを何処かで知っていたからなのでしょう。

では何を変えたのか?

記憶を掘り下げてゆくと、自分が弄れる音の上流を、機器を購入した時点のものから「全て」組み直していました。

  • DAC:Onkyo製DAC1000の投入
  • DDC:RASTEME製RUDD14の投入
  • PC:ノートPCからオーディオ用のUSBポートを持つマザーボードへマシンの組み直し
  • ソフトウェア:JRMCの導入(オンメモリー再生)
  • ケーブル1:DAC用の電源ケーブルを自作
  • ケーブル2:アンプ用の電源ケーブルを自作
  • ケーブル3:DAC~アンプ間のRCAケーブルの自作
  • ケーブル4:DAC~DDC間のXLRケーブルの投入
  • ケーブル5:DDC~PC間のUSBケーブルの置換(WireWorld)
  • 電源タップ:外来電磁波のノイズフィルタも兼ねたFURMAN製SS-6Bの投入

上記の入れ替えにより効果を感じられたもの、殆ど変化を感じられなかったもの色々あったのですが、最も効果が大きかったのは以下の2つです。

  • 電源構成変更:高周波ノイズの除去オーディオノイズと試行錯誤を参照)
  • ノイズフィルタ:コモンモードノイズ対策としてSS-6Bと壁コンの間にコトヴェール(SFU-005-3P)の投入

やはり特筆すべきはコトヴェールの強烈な効果。
ATH-W5000は上流の構成変化に敏感に反応することが謳われていましたが、アンプやDACをまるごと載せ替えたような変化が感じられました。

救世主チョークコイル@SFU-005-3P

一般的にノイズフィルタは音痩せ(量感の減退等)の原因となるため、オーディオ電源環境にやたらと多く入れるべきものではありません・・・、が、今回のヘッドフォン環境構築においては本当に良い方向に効果が出てきてくれました。
(というか、それまでの環境がノイズまみれだった?)

変化としては・・・

  • 密閉型にありがちな音の籠もりが抑えられて音のヌケが向上
  • 分離感が向上し、団子の様な印象に成り下がっていた音数の多い作品も聴けるように変化
  • 音を支えるディテールの向上(ボーカルの喉や唇の振動、唾液の絡み、弦楽器においては弦に指をタッチさせるときの爪・指の腹の接触音等々…)

・・・となります。これまで感じていたATH-W5000とAT-HA5000の不満がほぼ一掃されたのは驚異的で、最初に音を出した際、その極彩色っぷりに思わず「は?」という声が出た後に「マジか・・・」と崩れ落ちるレベルだったのを覚えています。
言葉として表現するのであれば、音が自分に入ってくるプロセスが、これまでの「音→耳→脳→解釈→アリかナシの判断」だったものが、「音→快楽」に変化した、といった感じでしょうか。私にとって聴くに値する生きている音とはホンモノに近い音ではなく、寧ろダイレクトに心に染み入り精神状態をプラス方向に導いてくれるような豊かな倍音です。それが概ね表現出来るようになっていました。

・・・

結論:自分なりに辿り着いた答えを書くと以下の通りです。
  1. ATH-W5000とAT-HA5000は購入して電源を入れただけでは求めている音がちゃんと出てくれません。単品コンポーネントということもあり、知識を付けてオーナーが「完成」させてあげる必要があります。
    …適当に鳴らそうとするとそっぽを向かれてスッカスカの音を出しやがります てしまいます。(その程度の知識は有していることが大前提である、ということなのかもしれませんが、)ちゃんと説明書にも書いて欲しい。
  2. 上流の環境を整えると徐々に正体を表し始めます。
    …「デジタルデータなので環境影響なんてあるわけない」→気持ちは解らないでもないですが、やれば判ります。逆に判らない人や判ろうとしない人が当機器に手を出すと手痛い出費となってしまう可能性大です。
  3. 電源環境を改善してあげると大化けします。
    …特に高周波ノイズを出してしまうスイッチング電源やパソコンには要注意。どうしても使うなら分電盤を見て別系統に。初歩的な電源極性(ニュートラル(コールド)、ライブ(ホット))も忘れないようにチェック。
聴きたい音を自分なりに突き詰めてゆくプロセスは悩ましくも楽しいものです。この先もヘッドフォン環境だけではなく色々と弄り倒してゆくことになるとは思うのですが、お金と相談しながら付き合って行きたいなぁ、と思うのでありました。

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