2019年5月26日日曜日

奥日光・日光白根山(中ツ曽根)・撤退記(難易度:★★★★★)

幾つか山を登っていると相性の良くない一座、というものが出てきたりするものなのかもしれません。自分にとっては日光白根山がこれに該当すると言って良いかと思います。

日光白根山はその名の通り日光の奥地に聳える一座なのですが、東京の自宅から日帰りで無理にアクセスしようとするとコースタイムを0.9~0.8掛で組む必要があったり、遅れが発生すると山頂からのロープウェイに乗れなかったりします。
ですので麓の湯元温泉で一泊してから早朝に登り始めるのが良いのかな、と考えていました。しかしながら日光という(自分的には)日帰りエリアのイメージを有するこの地に一泊、というのが些か腑に落ちなかったんですよね。「なんとか日帰りプランに収まらないの?」と。

そんな折にテント装備を整えたこと、及び湯元温泉自体にテント泊が可能な箇所が存在することを知り、(1泊2日ではありますが)決行してみることにしたのでした。

日光白根山に日光側から登る。吉と出るか凶と出るか…

準備段階の情報収集では湯元温泉からは山頂に向けて2本の登山道が伸びており、その内の南側のルート(白根沢ルート)はかなり道が荒れているという情報を掴んでおりました。
なので北側のルート(中ツ曽根ルート)であれば(一般ルートであることに加え、そこまで致命的なポイントや情報も無さそうだし)問題なく歩けるだろう。こう判断しました。

14:45 東武日光駅 

今回は湯元温泉にてテント泊ということもあり、自宅からの出発時間はお昼前という超スロースタートです。
東武日光駅から湯元温泉までは路線バスが直通で走ってくれているためアクセスは大変良いです。

往復で3000~4000円とコストは少しお高め

以前男体山に登った際には中禅寺湖前の二荒山神社まで連れて行ってくれましたが、今回はその先の戦場ヶ原を超えた更に奥に位置しています。

16:30 湯元温泉ビジターセンター

現地に到着した後は取り敢えずビジターセンターが閉まってしまう前に幕営許可を得ます。前回の八丈島の一件もあったので抜かりはないです(笑)

湯ノ湖の傍。人が多くないため設営箇所の選択肢が豊富でした。夏はこうは行くまい。

テント設営も30分程度で完了し、飲みながらボンヤリしていました。こういう静かな場所でスマートフォンで鳴らす小音量のJAZZは最高です。ココロの輪郭線を撫でてくれるようです。

このキャンプ場は水場や炊事場がしっかり整えられており、コンビニや温泉も完備、且つ登山道も眼の前に有るため、とても良いスポットだと思います…、が、夜中に近くの施設からモーター音(?)が(一時間おき程度ですが)聞こえてくる点だけは惜しかったな。

翌朝。
日の出と共に4時過ぎに起床。
予報では曇だったのですが、晴れてくれています。ココ最近は天候の引きがとても良いです。

朝の時間帯にあまりゆっくりし過ぎては2日行程にした意味合いが薄れることもあり、朝食及び撤収作業の後は早速歩き始めます。

6:30 中ツ曽根ルートの登山口

登山口に設置されていたであろう登山届のポストが壊れて地面に落ちておりました。不吉だ・・・。
自分はネット経由で提出済みですが、現地に赴いてからの提出はおそらく不可と思われますので行かれる方はご注意を。

ルート表示

最初は樹林帯を歩くのですが、少々道が不鮮明でした。木々に記されたマーキングを目印にルートを辿っていきます。


序盤は急登ではありますが、雪も少なくオーソドックスな登りでした。但し!なんだかルートが随分見にくく感じました。殆ど手入れをされていない廃道寸前といった印象でして、木々のルート表示も疎らであったことからGPSを頻繁に確認しつつ注意深く進みます。あまり人が歩いてないんでしょうね。

7:45 湯場見平

このポイントまで来ると空が仰ぎ見れる感じになります。眼の前には目指す白根山の前衛峰である五色山の稜線が視界に入ってくるため、以降は気持ちよく歩けそうな予感…がしたのですが、実はここからが物凄く厳しかった。

ルート、見えますか?

ここまでキツイ藪漕ぎもなかなか無さそうと思うのですが如何でしょう。上の写真はその中でも最もルートを視認出来たポイント(頭の上を藪が覆わず写真を撮る余裕のあったポイント)です。

湯場見平から国境平のポイントの間は色々と問題のあるルートだったのですが、5月という季節も相まって以下の点が難易度を物凄く押し上げていたように思えます。
  • 背丈以上の藪が視界の大半をカット
  • 目に痛みを発生させる笹の胞子
  • 足元が殆ど見えない
  • 融雪の踏み抜き(1m程度ですが)ポイントが多発
  • 登り下りともに自分以外の登山者が皆無
アイゼンを装備してましたが大分難儀しました

例えば、ルート上と思われる長く続く雪を辿っていくと、実は横の(ルート外にしか見えない)茂みの中に道が続いていたという事に気が付かない、みたいな残念な状況がちょくちょく発生します。
勿論進むべき道を外してしまうと容赦ないトラバースの連続と、マズい感じの斜面を覆う幾つもの倒木を越えて復帰することが余儀なくされるため、かなり神経を使います。

9:30 撤退

以降の道の難易度が下がるという情報の国境平のポイントまではあと100m程度上げるだけでしたが、やはり雪や藪でルートが十分に視認出来ないことから、ここで撤退する事としました。体力的、及び時間的にもスタートが早かったことから全く問題がなかったのですが、この先のルート上における積雪が深くなってしまう可能性や、藪に隠れた斜面への滑落も十分に想定出来てしまった事への"だからこそ"の判断です。

10:10 湯場見平

その後は問題なく下げれたのですが、やはり自分にとっては楽しさをスポイルするルートであったことだけは確かです。天気が最高なだけに勿体無い感は少し有るのですが、これこそがサンクコストと言えるものでありましょう。

10:53 下山完了

その後は湯ノ湖まで歩きつつの一人反省会。
スケジュールの組み方、十分な装備、体力面等、良い点もあったのですが、やはり…
  • ルートに関する情報の少なさに疑問を持てなかった
  • 決して知名度の低い山ではないので男体山と同程度という思い込みによる難易度やシーズンの見誤り
  • 日光側から登るという点への無意味な執着
この辺でしょうか。
まぁこんな感じで鬱々と歩いていたのですが、ふと目を前にやると・・・

遅い春。癒しの花。

天国のような陽気だった湯ノ湖

この様に見える事もまた、一山登ったあとのご褒美なのでありましょう。


・・・
という訳で日光白根山の撤退記でした。
結果だけ見ると残念の様ですが、GPSを持っていない状態であれば前後不覚になること必至だった状況を鑑みるに、(反省点は多いものの)ナイス撤退判断だったと感じています。これも積み重ねの賜物だとも思います。

それにしても!
この一座は本当にどうしましょう。実は今回は2度めのチャレンジだったんですよ(笑)
自分はマイカーを保有していないので、今度来るときはタクシーで菅沼ルートか、丸沼高原スキー場からロープウェイ往復かなぁ?うーむ・・・。なんかコレジャナイ感が。

2019年5月13日月曜日

八丈島・西山(八丈富士)(難易度:★☆☆☆☆)

ゴールデンウィークの後半は日本列島から少し南下した位置にある八丈島に遊びに行ってきました。
これまで交通手段としてはバス、電車、飛行機と色々利用してきましたが、船でアクセスというのは無かったよなぁ、と思うところがありまして計画を立ててみた次第です。それに加えて今後の山旅の幅を広げるべくテントを背負い込んで出かけてみたのですが、そもそもこの重量でどの程度歩けるのかを知りたいというテーマもあり。事の顛末や如何に?

八丈島はひょっこりひょうたん島のモデルとなった島なのだそうな

出発は浜松町駅から少し歩いたところにある東海汽船の竹芝客船ターミナル。いやもう、船旅なんていつ以来だろう?飛行機なら1時間程度で行けちゃうのに敢えて11時間以上を要する船。ですが結構テンション上がるんですよ?こういうのは大事だよね・・・、とか思いながら桟橋に向かったら間違えて日の出桟橋に行ってしまっておりました。時間に十分な余裕を持っていたことと竹芝客船ターミナルが徒歩で5分程度の場所にあったので全くもって問題はなかったのですが。

23:00 八丈島まで連れて行ってくれる橘丸

橘丸は先日からの運行遅延の影響が響いているとのことで、更に1時間ほど遅れての出発。
ようやく乗り込んで寝床を確保した後は甲板で一杯やりながら東京湾を眺めていました。なんだか際限なくタキシングを続ける飛行機のような妙な感覚だったのを覚えています。まぁ飛ばれても困るわけですが。

翌朝。島民の方による太鼓、及び「おじゃりやれ」のインパクトのある語感による歓迎を受けつつ底土港に到着。
…ですがスッキリしない曇天模様。まぁ降られそうという感じでもないので”登山にはこれくらいが良いのかもしれない”と思いつつ歩き始める。

9:20 底土港

取り敢えず寝床として予定している底土港横のテント場(底土野営場)に寄っておく事としたのですが、そこで管理担当者との電話にて残念なお知らせが・・・。

”テント場が満員と相成りました”とな。

ほほぅ!こいつは困ったな(笑)

結構広いテント場だと聞いていたのですっかり油断していましたが、そこはゴールデンウィーク。やはり人が集まりそうな場所に出向く場合はポイントを事前に押さえないとダメって事ですね。テントって旅のスケジュールが自在にデザインできそうなんですが、それは事前のしっかりした手配があってのこと。振り返えるとこういうのは当たり前っちゃ当たり前だったんでしょうが勉強させてもらいました。これも経験。

テント泊は次回に持ち越し。ああっ…(笑)

こんな事があったのですが、気を取り直して早速登り始めることにしました。ターゲットは眼の前にとてもわかり易く聳え立ってくれているのですから。

八丈富士。其の姿は甘食の如し。あそこまで行きます。

港から山頂を目指す今回。要するに海抜0メートルから上まで上げることになるわけです。いつも標高Nメートルの一座を登ったと言いつつ、実際はスタート地点の標高がそこそこ高かったりするんですよね。ターゲットは1000メートルにも満たないのですが、ザックが少々重い(笑)ので油断せずに進みます。

まぁ、歩き易い車道ではあるのですが。

ひと登りすると出発地点の底土港を含めた島の大凡の形が解ってきます。それにしても八丈富士を登ろうとしてる方の大半は途中まで車を使われているようで、自分の他にはレンタル自転車で島巡りをしようとされていた方が1名歩かれていました。

11:09 八丈富士分岐

左折して暫く進むと牧場が在るようです。折角ですので帰りに寄ってみることにしました。

11:20 八丈富士登山口

やはりよく歩かれている道ということで、手入れが行き届いています。というか、コンクリートのスロープが靴のソールに良く食いついてくれてとても登りやすいです。これは下る方も同じことを思われているようで、お互いに譲り合いながら進んで行きます。

11:37 あれ、もう半分?

登られている方の大半がTシャツ、ジーパンにペットボトルを左手に持った格好からも分かる通り、八丈富士はこの島のいくつか在るアクティビティの中の一つということなのでしょう。

12:00 お鉢巡り分岐(実はここから火口内の祠に進めるらしい)

登り始める前までの移動時間を鑑みると予想より大分早く目的地に着いてしまった感があります。ですが、その分ゆっくり火口周辺を巡れそうですね。

かなり綺麗な火口(というか断崖絶壁)と、そこから見える八丈島の市街地

12:30 八丈富士山頂

ここで昼食兼一休み。
宙を舞うツバメの大群のドッグファイトを鑑賞しつつ、チキンラーメンを啜っておりました。これが実に美味かった…。
そう言えば今回は珍しくバーナー使ってみましたがいつ以来だろう?いつもは山専ボトルで事足りてるから出番が少なくなっていたんですよね。荷物は増えてしまうのですが、たまにはこういうのも良いものです。

うーん。贅沢なランチタイムでありますよ。

欲を言えばもう少し青空が見えればな・・・とは思いましたが、しっかり登れて十分な稜線ハイクが出来ているので十分であります。

稜線の向こうは太平洋。離島でしか味わえない。

あの奥に見える島は八丈小島とのことで現在は無人島とのこと。昔は人も住んでおり、小学校なども存在していたのだそうな。

・・・
しばらくすると再びお鉢巡りの分岐に戻ってきたのでそのまま下山しつつふれあい牧場方面に足を伸ばしてみました。

14:00 ふれあい牧場

どの牛にも女性の名前が付けられているようでした。確かこの子は「かすみ」と名付けられていた様な…。

ひと登りした後のアイスクリームの誘惑凄いわ。

この後は登ってきた車道をボチボチ歩いて再び市街地方面に戻ってきました。夕方の温泉以外は特に予定もなかったので、空港を横切って八丈植物園にも少し立ち寄ってみました。

八丈植物園

八丈植物園は大分広いようであったため全てを見ることは叶わず。

ビジターセンターもあるようですな

そろそろ温泉に向かうバスの時間が近づいてきたぞということで、再び歩き始めます。

17:30 大小前BS

バスを待ちながら夕食を取っていたのですが、買い出しをおこなったマーケットがこれまた昭和の雰囲気を携えた懐かしい造りだったのが印象的。食料品売場の横にガンプラを陳列したショーケースが並んでいたりと思わず少年時代を思い出してしまう様な垢抜けなさ。メダルで遊べるルーレットゲーム機やジャンケンゲーム機が置いてあれば100点だったかな?でもタイムスリップしたような気分になれました。いいよね、こういうの。

そして終バスに10分ちょっと揺られて温泉に到着。
自分はいくつか在る八丈島の温泉の中でもローカル感が一番強いという”ふれあいの湯”を選んでみました。

樫立・向里温泉 ふれあいの湯

驚いたのはその名の通り人と人との会話が存在しているというところ。何と言いますか(こういうのに驚くというのも奇妙な話なのですが、)一般的な温泉だと連れ立った親子の間での会話はあってもその枠を超えたコミュニケーションって稀じゃないですか。自分はそれがここにはあった様に感じました。「あれ?」みたいな。
ですが!耳に飛び込んでくるお年寄りの流暢な方言には目を白黒せざるを得なかったです。言ってることが殆ど理解出来ない。まさに異国の地の醍醐味といったところでしょうか。

温泉から出て一休みをしたあとは野宿予定の底土港に向けて歩きます。バスは18時前には終わってしまうので乗れません。でもまぁ2時間弱とのことなので、(もうこの辺は山歩きで感覚が麻痺してきてるのもありますが)すぐ着くな、と思いつつヘッデンを装備。バスから道を少し見ている感じだと、大坂峠までは歩道が無かったのでヘッデンのライトの方向、及び車の接触に気をつけつつの歩きとなります。

大坂峠前のトンネル

ここを抜けると歩道が有りますので余裕です。というか野宿で10時間以上という方が滅入るように思えた事と、本当は体力が全然残っていたので三原山に登るか島一周しちゃおうか?という感じでした。当然その様な適当な事はせず自重したのですが。

19:07 大坂峠

”温泉上がりで気持ち良い~”などと遠くの街の灯を見ながら暫くボンヤリ歩いていると車が一台止まりました。

「どこまで行くの?底土野営場?」

と質問されたので、

「野営場は一杯の様ですので、底土港に向かっています。」

と答えたら、

「乗っていきなよ。」

との有り難いお言葉が。折角なので乗せ頂くことにしました。色々とお話を伺うと八丈島のバスの運転手夫婦であることや、底土野営場が一杯になった理由が急遽予約の入った50張前後の大グループによるものであること、更にはここ数日飛行機の欠航などで足止めとなっている旅行者が溢れていること、及び野宿ポイント等を色々と教えていただきました。
もう、こういう見ず知らずの方に親切にして頂くということが人生の中では無いように思えていただけにとても嬉しかった。こういうことも有るのだな、と思いつつ15分ちょっとであっという間に底土港に到着。お礼を伝えて車を降りたのでした。

星空と波の音を聴きつつご就寝

今回は船客待合所屋上のデッキで寝たのですが、実はテント場から12時くらいまでハメを外してる沢山の若い人たちの声が届いておりました。何だか結果的にここでの野宿が正解だったような気がしましたが本当のところはどうだったのだろうな…。

翌朝。

This is 八丈島

めっちゃ晴れてる(真顔)
昨晩星空見えてたもんな・・・

ですが9:40には出航予定だったので、それまでの間ではありますが近くのお土産屋さんまで散歩しつつ今一度島を歩いてみることしたのでした。

島が「ここからが本番だぜ?」と言っている

お土産屋さん「民芸あき

このお店は昨日車に乗せていただいた方から教えていただいたのですが、とても良い感じのお店でした。いくつか買い物をした後、再び桟橋に戻ることに。

橘丸再見

東京から往復してきたであろう橘丸。何だか大分懐かしい感じがするじゃぁないですか。

アディオス、八丈島

・・・
ということで八丈島登山記でした。
色々とありましたが、なんだか自分の経験値がちょっとずつ上がってきているような気がします。八丈島に来て良かったな、と思えたのでした。

そうそう、お土産…と自宅に戻ってから見てみると…。

お土産で買った焼酎は青ヶ島の特産とのこと。八丈島じゃないじゃん~

今回はやらかしが多かったよな…(反省)

美人稜線