2018年7月21日土曜日

北アルプス・槍ヶ岳(難易度:★★★★☆)

今回は北アルプスの槍ヶ岳に登ってきました。
槍ヶ岳というと登山を愛好する者にとっては必ず一度は訪れてみたい山として広く知られている名峰ですが、実際に自分の足で登ってみると言葉通りに優しさ、厳しさ、そして美しさを兼ね備えた極めて秀逸且つ魅力的なコースであることを知るに至りました。


実は昨年も同山に向けたプランを組んではいたのですが、天候に阻まれてしまい先送りとなっていました。ところが今回は出発直前の天気はご覧の通り100点満点のピーカン。この時を待っていた!

先週末の西日本から中国地方の豪雨の影響が懸念されましたが、天候のリスクは極めて低し

旅程としては早朝に上高地に入り、槍沢コースにて一気に槍ヶ岳の肩(槍ヶ岳山荘)まで登り、ピークを踏んで1泊してから同コースを戻るというオーソドックスなピストンです。

今回も竹橋からアルペン号で出発

アルペン号は以前谷川岳や白馬岳に登った際にも使用しましたが、早朝に登山口にアクセスできるという点が唯一且つ一番の魅力。ただし自分はバス泊でろくに寝れたことがなく、ほぼ徹夜状態のまま10時間前後の登山に挑むこととなりこれがまた結構キツい。睡眠剤とかをもう少し上手に使えれば状況が異なってくるかもしれません・・・。



4:40 平湯温泉

実は今回乗車したアルペン号は上高地まで直通で連れて行ってくれるわけではなく、上高地の一歩手前にある平湯温泉にて路線バスに乗り換える必要がありました。
(とは言え、寝起き状態のまま登山準備に取り掛かるよりは少し前に目覚めていた方が具合は良いのかも)

5:20 上高地バスターミナル

上高地って上品な避暑地のイメージがありましたが、早朝は登山客の巣窟となっており、非常に居心地が良いw

登山届の提出等々、準備が整ってからはまずはチェックポイントとなる明神、徳沢、横尾を目指して梓川沿いに歩き始めます。


朝の上高地は何もかも澄み切っておりました。
下界の暑苦しさがここではさほど感じられず、「避暑地」という言葉の意味を思い知ります。

あ、これは写真には残せないヤツだ・・・

とにかく水の透明度と光の質が凄いんですね。東京の薄汚いソレとは格が違います。

6:38 明神

小休止後に先を目指します。

目指す槍ヶ岳は奥に見える山の更に奥

序盤は全く登りがなく、極めて平坦かつ綺麗に整えられた散策道を進みます。

7:26 徳沢

多くの人でキャンプ場が賑わっており朝食の良い匂いが至る所から。山行の歩き始めでこういうのは初めてかもしれません。


このレベルの景観がポンポン出てくるので感覚が麻痺してきます。西東京や山梨あたりだと倒木や引っかかった落ち葉で雑然としちゃってるところだよね。やっぱり北アルプスは凄いわ。

8:30 横尾

ここからは蝶ヶ岳方面、涸沢方面、槍ヶ岳方面の3つに分岐

大きな吊り橋を渡ると涸沢方面に行けるようです。奥穂高岳とかに登れるようですので、いつか遊びに行ってみたいものです。今回は槍ヶ岳を目指しますのでスルーして先に進みます。

徐々に山道っぽくなってきますが、依然として平坦な道が続く

10:22 槍沢ロッジ

さすがにこの時間になると気温が上がってきます。少し早かったですがここで昼食を取ってしまいます。そしてここから目指す槍ヶ岳の山頂をほんの僅かですが望遠鏡越しにのぞくことができました。なんか山頂の凄いところに随分多くの人が群がってることを確認w

11:25 ババ平キャンプ場

ここからは徐々に斜度が出てきます。

12:00 槍沢大曲り

この槍沢ルート、水場が非常に豊富ですので、実は持ち運ぶ水は2リットルくらいで良かったのかもしれません。気温が30度前後であるにもかかわらず水温は(指が切れ落ちる位)極めて低く、飲む度に呻き声が出てしまいます。もう、本当に堪らないものがありました。自分の中では命の水という言葉がジャストフィット。これ以上美味い水は今生飲めないのではなかろうか。

そしてその先に進むと、水源となる雪渓を抱え込むカールの光景が目の前に展開され始めます。


まだ槍ヶ岳の山頂である穂先は見えませんが、振り返ると原色で構成される眺望が少しずつ形成されてゆくことが分かります。頑張って歩いた分だけご褒美が貰える感じですね。

14:39 殺生ヒュッテ分岐

雪渓を幾つか越えた先でとうとう槍ヶ岳の穂先を視界に捉えます。
只々天を指し示すユニコーンの角のような御神体に胸を打たれました。

そしてここからは本当にキツかった。徹夜状態で1500m上げつつの10時間以上の歩きはさすがに堪えるんです。ですがここで止まらずに済んだのは先日の装備の見直しと、行動食の見直しによるところが非常に大きかったなと感じました。無駄な粗熱が出て行ってくれるので汗やミネラルが必要以上に出て行きません。そして身体が「行ける」のサインを出しているのを確認して最後のひと頑張り。

15:45 槍ヶ岳山荘

小屋の前に到着してザックを下ろして小休止してると、その後にも次々に登ってくる方がいましたが、やはりどの人も表情は笑顔なんですよね。自分はこの純粋な空間が大好きなんです。


寝床を確保した後、穂先にアタックするべきか否か迷いましたが、どうやら登山者過多による渋滞で往復2時間30分~3時間を要するようで、夕食までに間に合わない可能性があることと、山頂で日没となってしまうと具合が良くないのでお楽しみは翌朝にとっておくことにしました。

小屋の前まで渋滞…

そして翌朝。
5時に朝食、7時に上高地に向けて出発予定としていたため、先手先手で動いて穂先に向かいます。


登り始めとハシゴ場は少し緊張しましたが、鉄壁の3点支持で上へ上へと進んで行きます。足場と捕まる場所が豊富なので慎重に行けば難易度自体はそこまで高くないと感じました。勿論ミスるとお終いなんですけどね。

写真では何も伝わらない

そしてようやく山頂に到着です。

東鎌尾根からの常念岳、大天井、燕、西鎌尾根からの双六などが眼下に一望できる絶景

5:42 槍ヶ岳登頂成功

登山を始めた当初は文字通り雲の上の存在だった槍。それが足の下にあるというのはなかなか感慨深いものがあります。やれば出来るものなのですね。

余程条件が良かったのだろう、槍ヶ岳の影も確認。その後は慎重に下げて行きます。

アタック完了。

ラッキーだったのはご来光目的の登山者が一通り捌けた後のタイミングであったため、登り降りでの待機時間が全く発生しなかったことですね。さすがにあのエクストリームな場所で2、3時間というのは厳しいですし、せっかくの気分も萎えてしまいますから。今回は翌日にリスケして大正解でした。

その後は小屋にデポっていたザックを回収してから上高地に向けて出発。

登りではあれ程時間を要していた殺生ヒュッテまでの道が一瞬…

おなじみの高山植物も綺麗

徳沢あたりに帰ってくるとお昼の時間帯ということもあり一般観光客も多く様々な人とすれ違いました。

14:15 上高地に帰還

少し遅めの昼食をとってからビールで一人乾杯しつつバスにて東京に帰還。


・・・
ということで槍ヶ岳登山を無事成功させることができました。

今回は天候に非常に恵まれたことと、やはり装備の根本的な見直しが成功要因として大きかったと思います。
そして登果としては樹林からカールへと展開する原色の世界に包まれながらピークに至るという、求める非日常としてこれ以上ない経験として記憶に刻まれたのでした。

登山とは、本当に良いものです。

2018年7月8日日曜日

谷川連峰・谷川岳(西黒尾根)(take3)(難易度:★★★★☆)・撤退記

登山靴のソールが傷んだために新たな靴を導入したこともあり、履き慣らしの意味を込めて谷川岳を歩いてきました・・・が、今回は途中で撤退することとなりましたので、原因を記しておきます。歩かれる方に何かの参考になればと思います。

谷川連峰主脈縦走

想定では1日目に西黒尾根から山頂を経由して一ノ倉岳まで歩き、肩の小屋で開山を祝いつつの一泊、翌朝からは平標山方面に縦走の計画でした。
かつて数回登った谷川岳と、平標山を経由して仙ノ倉山まで歩いたコースを繋げるという、自分にとっては憧れのコースの一つ。

8:50 土合駅出発

良い天気です。昨年の5月にも歩いていましたが、その頃と比べると少し暑いかな、という程度で出発当初は特に問題ありませんでした。

9:09 谷川岳ベースプラザ

慰霊碑の横に開山祭の翌日の横断幕が掲げられておりました。翌日の夜明け前に到着する登山者はここで何かしらのイベントにて饗されるとの情報を事前にキャッチしていましたが、自分は土日の2日で新潟方面まで抜ける計画であったため、こちらには参加せず。

9:20 西黒尾根登山口

いつものことですが、体が回り始めていない登り始めは少々キツイ感じです。

9:37 鉄塔

通常であればここの鉄塔を超えた辺りからエンジンが掛かる感じなのですが、どうにも調子が出ません。この後も暫く樹林帯が続くのですが、異様に高い湿度、温度、そして、極めつけが「無風」であった点です。発汗量が尋常ではなかったので無理せず都度休みを入れ、水、ミネラル、カロリーを取りながら進むのですが、ペースも以前と比べると大分遅めで標準タイムすら割り始めてしまいました。

11:40 天神平が見える一発目

今回は歩く距離が長いということもあり、荷物も少々嵩んでいたこともあるのでしょう、この時点でかなり体力が削られてしまっており、翌日の縦走計画については中止することを視野に入れつつ、なんとか歩いている状態。

とにかく尋常ではないほど「暑い」のです。
7月の低山歩きは暑いに決まっていると思い込んでいたこともあり、水分等を入れることが出来るのであれば汗が出ること自体は特に問題としていませんでしたが、結局この体からの警告を無視したことが一番の敗因でした。熱を体の外にベント出来ていなかったのですね。

12:15 第一鎖後に御神体に手を合わせてから歩くのを止める

本来であればここからが西黒尾根の楽しさが凝縮された道が始まる筈なのですが、明確な異変に気付いたのはこの第1鎖のポイント。全く登れないという状態ではないのですが、明らかに「楽しくない」のですよ。耐えてるだけ。

そして第二鎖を見た際、僅かな吐き気と共に明らかに体が拒否っていたのを確認して、今回は残念ながらここで撤退することにしました。

数度登って道を知っていることも判断のポイントとなったのですが、この先の道はそこそこ厳しい感じの岩場。それ故集中力がない状態で岩場へ張り付くと危険。下手に踏み込んでフラフラの状態になってからエスケープ判断を行うとタマが幾つあっても足りない感じがします。ちゃんと保険をかけているとは言え、無理に登ってヘリのお世話になる、なんてことは絶対に避けたいですからね。

残念ではあったのですが、途中で正しい判断を行えたこと自体はある意味「成功」であることを認識しつつ下山を開始。

13:22 L字木

いつもであれば登っている途中にコレほど特徴のある木を見逃す筈はないのですが、下ばかり見て歩いていたことが分かります…。

13:49 西黒尾根登山口に下山完了

このあと谷川岳ベースプラザで真っ白に燃え尽きたような感じになっていました。

・・・
振り返ると撤退の真の原因は以下の2点。
  • レイヤリングの失敗
   ミドルレイヤーに適当なシャツを着込んでいたこと。
   ベースレイヤーとアウターは専用のものを装備しており、熱や蒸気は外に逃がしてくれる仕様でした…が、この綿100%がガッチリと保水してしまい、それらの機能が無効化されて熱中症を引き起こしてしまいました。

綿100%…
   
   排熱問題ということで単純に脱げば良さそうですが、下手にアウターを脱ぐと濡れたシャツが外気に晒されて一気に体が冷えるのでそれはそれで調子を崩しちゃうんですよね。知識不足というのは本当に怖いものです。
   翌日、早速ちゃんとした素材(ウィックロン)のシャツを購入しました。外見と裏腹に結構なお値段でして、こういう痛い経験がないと本当の価値が理解出来なかったというのも少し悲しい…。
  • パッキングの問題
   一泊二日の縦走ということで、それなりに水、食料を詰め込んだのですが、コレも無駄に体力を削る要因になってしまいました。水は小屋でも調達できる可能性があること、及びそんなに水を必要としない秋季に計画を実行する等、やりようはあった筈。以前の成功体験がこの時期、このルートの難易度を見定める足かせになっていましたね。

・・・
今回は撤退と相成りましたが、翌日以降、自身が驚くほど淡々と原因究明→対策に動いていたのは(なんと言いますか)笑いました。格好をつけたい相手が一緒だったらちょっと違っていただろうか。だがしかし。この年になると「失敗」なんて次への糧となる「学び」の別の見え方でしかなく、悔しい云々は2の次3の次になりますね。職業病じゃないのコレwとか思ってしまいました。
PDCAぐーるぐる。みたいな。